コラム

本当に就職難は新卒一括採用が招いているのか

2012年7月2日

先日の日経新聞社説に以下のような記事が掲載されていました。私としては思うことがあったので、この社説を基に感じたことを書いていこうと思います。

否定的な部分もあると思いますが、私が社説を書いた人のことを嫌いといったことではないのであしからず。ベースとして使いたかっただけです。

「新卒一括」が招いた就職難
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E4E4E7EAE1E7E2E0E3E3E3E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
 大学生の就職活動は今年も長期化している。学業に割く時間は減り、「就活」に苦戦し自信をなくす学生も多い。この状況を改めるには企業の採用改革が必要だ。

 文部科学省と厚生労働省がまとめた10月1日時点の大学生の就職内定率は59.9%にとどまった。現在の方法で調査を始めた1996年度以降では最悪だった昨年度の57.6%に次いで低かった。

 なかなか内定がとれず、就職活動を長期間強いられる学生が多いのは、景気が不透明で企業が採用を抑えていることが背景にある。


まず、上記について「景気が不透明で企業が採用を抑えている」ことは間違いないと思う。特にマクロの世界で見たときに日本の市場がシュリンクしているにもかかわらず、採用人数が増えることはまず無い。

しかし、就活が長期化する理由として「景気が不透明で企業が採用を抑えている」という表現は適切なのだろうか。

マクロの世界では市場の収縮により人手が余るという現象が起きるのは理解できるが、その半面、ミクロな視点では企業の人事担当者からは「人が足りない」「人を採用したくても採用できない」という声が上がっている現実もある。

果たして、学生がなかなか内定が取れないのは景気や経済情勢によって採用を抑えた企業の責任なのだろうか。数年人事をしてきたが、採用を抑えた企業の責任だけにとどまる問題ではないと思っている。


 だが根本的な理由は、学生が4年生になったばかりの4?5月に企業の選考が集中し、新卒者をまとめて採る「新卒一括」方式が定着しているためだ。春に選考に漏れると、その後面接などを受ける機会は大幅に減ってしまう。

 経団連は今の大学3年生から採用活動を変え、会社説明会を2カ月遅らせ3年生の12月からにした。しかし秋から準備に追われる学生は多く、就職活動が始まるのが早すぎる実態はあまり是正されていない。面接などの選考試験の開始は4年生の4月のままで、そこで選に漏れた学生の「就活」が長引く現状も変わりそうにない。
 商社の業界団体である日本貿易会は昨年に続き、会社説明会や選考試験の時期を大幅に遅らせるよう経済界に働きかけるという。


「根本的」と書かれているが、「根本的」以下の記述は根本的ではないように思われる。

私は、「新卒一括」方式自体は極めて経済的な活動だと思う。
企業にとっては、新卒採用時期を一時期にまとめることで効率的な活動が可能となる。マーケティング的な見地からも、就活生というステータスの学生に対してアプローチできるのは極めて効率的だ。入社後の教育も考えると一括採用のメリットは意外にたくさんある。

そして、学生にとっても極めて経済的な活動になっているように思われる。リクナビなどのナビサイトを新卒一括採用の諸悪の根源だと言う人も多いが、私は諸悪の根源だとは思わない。
ある時期に企業が欲しい情報をプッシュできるプラットフォームであり、その情報を学生が並列的に比較検討できる画期的なプラットフォームである。

リクナビは新卒一括採用によってできた産物ではない。「新卒一括」方式は、リクナビ誕生以前から存在した。リクナビは「新卒一括」方式をより効率的におこなうためのツールとなったに過ぎない。

「春に選考に漏れると、その後面接などを受ける機会は大幅に減ってしまう。」とあるが、それは当たり前である。応募人数をどこに集中させているかだけの話だからだ。通年採用で1年間という期間に応募人数を均しても機会自体はさほど変わらない。

今年から倫理憲章が改定され12月からの就職活動となったが、はっきり言ってメリットが全く分からない。企業にとっても短期間で面接しなければならなくなり、学生も短期間で企業を見なければならない。

結局、多くの企業が4月-5月に内定を出すのだから単純に期間を短くしただけで混乱だけが広がるのではないかと思っている。人材獲得競争が激しくなる今日で、わざわざ内定出す時期を遅くする企業は珍しい。

よほど内定を遅く出すメリットがある戦略を作っていれば良いが、そのような戦略シナリオを構築している企業を私はほとんど見たことがない。
表現は悪いが、人事をやっていて、他社に内定をもらっている学生をひっくり返すのは非常に難しい。コスト面でも非常に効率が悪い。同時期に並列的にアプローチして正々堂々と学生に選んでもらうのが、一番お互いにとってメリットがあるのではないかと思う。
結果、内定出しをする時期は遅くならない。開始時期が遅れて終了時期が変わらない。より短距離走になっただけなのだ。

もし、これを長期化対策と銘打つならば、あまりにもお粗末すぎる内容である。

新卒一括採用は、ここ数年で無くならない。無くす必要がない。必要な企業が手法を採用する、ただそれだけのことで、そこに善悪は無い。


 そうなれば今よりは学生の負担は減るだろうが、より効果があるのは企業が新卒一括方式の採用を柔軟にすることだ。既卒者採用や、4年生の秋や冬にも選考試験をする通年型の採用を広げたい。
 経団連の会員企業の7割弱は既卒者の応募を受け付けている。だが民間の調査では、既卒者を受け付けている企業のうち、7月時点で既卒者に内定を出したのは2割に満たない。通年採用は中途入社者の採用で一般的だが、新卒者で実施している企業は少ない。


「既卒者採用や、4年生の秋や冬にも選考試験をする通年型の採用を広げたい。」とあるが、なぜ後ろ後ろへと後延ばしするのだろうか。後延ばししても、誰のメリットにもならないと思う。
企業は「できる限り早く学生に接触したい」「長い時間かけて一緒に働く人材を見つけたい」と考えている。学生は、「できる限り早く色々な企業を見たい」「社会構造を知りたい」と考えているのに。

既卒者採用という言葉があるが、これも対策としてはお粗末な気がしてならない。既卒者で内定が出ている人というのは、国が対策をしていなくても内定が出る2割というのが現状だろう。
「海外に留学した学生を採用する土壌を作る」などと理由づけしているが、今も昔も海外留学でしっかりと学んできた人間には内定を出す。進んで内定を出したいくらいだ。

大学生時代に内定が出なかった人に対して既卒者採用という対策が効果を発揮するとは思えない。経験や能力が同じであれば、既卒者より大学生を採用したいというのが企業のまともなロジックではないだろうか。

私は、既卒者というレッテルを張る対策に未来はないような気がしている。

上記も含めて、大学生により早期に企業に触れてもらう形を作るべきだと考えている。要するに「就活の早期化」だ。


 学業への悪影響を放置すれば学生の質が低下する。企業は能力の高い人材を確保するためにも採用改革に踏み出す時だ。


就活の長期化や早期化が学業への悪影響と考える方も多いようだが、本当に悪影響なのか。

「アルバイトにいそしむ学生はどうなのか」「部活にいそしむ学生はどうなるのか」「恋愛に夢中になる学生はどうなるのか」。これらを否定できるのか。さらに「大学生に無関心な教授はどうなのか」「大学生を放置する大学機関はどうなのか」「大学の産業化によるAO入試導入はどうなのか」。このような事を黙認するくらいであれば、早期に大学生を企業に預からせた方がよほどマシな気がする。

早期に就活を始めたからといて、学生の質は低下しない。質の低下が起きているとするならば、大学までの学校教育や大学での上記のような黙認のほうがよほど原因だ。

早期化を論じると「大学入学直後から就職活動に必死になってしまい大学生活が混乱する」「大学生活でしかできないことをやらせよう」などの論調が出てくることは間違いない。しかし、このような事で学生生活ができなくなると考えるのは、大学生を舐めているのではないかと私は思う。

就職活動を早期に意識することで、本当に学生生活が疎かになるのか?学業・研究も必死に、アルバイトも必死に、サークルも必死に、恋愛も必死に、就職活動も必死に、やりたいと思った人がすればいいのではないのか。

その「優先順位をつけられない」「選べない」と判断するのは、あまりにも学生を舐めている気がする。研究に勤しみたい、学業に勤しみたいという学生さんは、そちらに力を傾けるべきだ。そこで培った力が、いずれ社会での力になることは間違いない。

プロフェッショナルなビジネスパーソンを育てるという使命を大学が担わないのであれば、それを担うのは企業で良いのではないか。そして、その企業の活動に時期制約はほぼ必要ない(最低限のルールは必要だと思う)。

ビジネスに興味を持った学生、就職活動を始めたいという学生、やる気が出た学生に対して、いつでも門戸が開かれているという環境を整えることが重要なのではないだろうか。そのためにも企業は、意思のある学生を早期から受け入れる土壌を作らなければならないと思う。

プロフェッショナルなビジネスパーソンの育成によって、景気や経済情勢といった外的要因を除いた就職難への解決策となるのではないだろうか。

非常に偏っていると思われるかもしれないが、そのためにも就職活動の早期化を提案しても良いのではないかと考えている。もちろん、当社のビジネスでもこのような現状にメスを入れられるようなサービスを展開していこうと思っている。
そして、大学生の皆さんには早期に社会や企業に触れてもらいたいと思っている。


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